最後の浮世絵師
備中国で起こった事件。
田嶋政太郎が離縁した若い妻に再縁を迫るものの、
拒否されてしまう。
逆ギレした政太郎は元妻を手にかけてしまった。
このニュースは「郵便報知新聞」に取り上げられた。
「郵便報知新聞」は「報知新聞」「スポーツ報知」の前身にあたる。
今なら、犯人の顔写真と殺戮現場の家の写真などが掲載されるくらいですが、
当時は違ってました。
写真が掲載できなかったので、
絵で事件を表現しました。
その生々しい殺戮その決定的瞬間を
絵描きの想像力が視覚化しました。
それがこれ。
かなり衝撃的です。
この絵を描いたのは、
「最後の浮世絵師」と呼ばれた月岡芳年です。
当時のこの種の事件の絵や歴史上の人物の血みどろのシーンなど
を描いたものが評判を呼び
別名「無惨絵の芳年」とも形容されました。
まぁ、グーグル画像で月岡芳年と検索を入れてみて下さい。
凄い絵が一杯見れますよ。
北斎〜国芳はパブリックは絵師ですが、
芳年はちょっとアンダーグランドというか、
平和な江戸時代ではない、
維新の動乱、戦争をへて
近代に入り、人間個人が抱え込んだ問題までを
絵の表現に内包している絵師なのです。
芳年12歳で歌川国芳の弟子になっています。
三島由紀夫が愛した絵師としても有名ですね。
そんな月岡芳年の絵から一枚取り上げます。
「血みどろの絵」はこのブロブには会わないので、
違った意味での究極の絵を紹介します。
究極の絵画17
月岡芳年 「義経記五条橋之図」
大判錦絵 明治14年(1881)
さてこれが描かれたのは1881年。
当時これほど人の動きを動画的に描いた人は、
人類には居なかったはずです。
もちろん北斎や国芳の浮世絵にも、
動きのある絵はありましたが、
こんなにも映画的視覚効果でもって描いた芳年は、
前映画時代の絵師と呼んでもいいような、
トップランナーだったと言えます。