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浜本隆司ブログ オーロラ・ドライブ

hammererix.exblog.jp

浜本隆司のブログ

長沢蘆雪 キャットタイガー

「画家の生涯を知ることと、その画家の作品を味わい理解することとは全く関係がない。」
Hamaremix

と思うのです。
ですから、画家の研究という時にその画家がどこでどのように生きたかを
調べたりするのですが、それは作品の裏を見るようなもので、表に描かれ
ている絵の内容を理解するものではありません。
ですが、この作品がどのような人物から生まれでたのか?どこに住んでい
たのか?どんな人物であったか?またその時代はどんなもにであったか?
その師匠はだれか?といった関心がどうしてもわいてきます。そこから調
べていくのは人文科学の研究であるのだと思います。ですから絵を観賞する
こととは別物と考えましょう。その画家のことを何一つ知らなくても怖じ気
づくことはありません。

絵を本来的に味わうには、その画家のことなど何も知らないままその絵の前
に立ち、自身のサラの目でもって見つめるのが一番良いのです。
美術館などで、昨今はヘッドフォンで解説お聴きながら観賞するシステムも
ありますが、先ず最初はさらの目で見ることが最良の絵画鑑賞なのです。

もう、それだけで充分に観賞は完結しているのですが、その絵のことが知的な
レベルで興味がわきおこってくる場合に、キャプションや音声解説を利用すれ
ばいいと思います、がそれは絵画鑑賞ではありません。予備知識の得るという
ものですね。

映画を観ていて、別レベルで音声解説などあったら嫌だと思うのですがそれと
一緒です。

もちろん私も絵を見る時はキャプションや本などから知識を得ますが、私は私
の知識外の最良の作品に触れる時に一番の感動をおぼえるというものです。


そのことはこの情報時代にいかに瑞々しく視覚体験をするかというヒントにもなると思いますよ。


前置きが長くなってしまいました。
長沢蘆雪(ろせつ)のことです。

長沢蘆雪という画家が
江戸中期に京都で活躍しました。
蘆雪もまたその生涯があまり知られていません。
蘆雪という絵師に関していえば、もう絵が不思議なので、
そのまま彼の生涯も謎多きものでいいと思います。

日本絵画の星 26 長沢蘆雪(1754-1799/江戸中・後期)

南紀串本(紀伊半島の最南端の地)の無量寺という禅寺があります。
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そこに蘆雪の障壁画群が残されていきました。

これですよ!これ。
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「虎図襖」
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「龍図襖」


この虎、愛されキャラですよね。
猫みたいで、、、
しかし、この虎図は日本一の大きさです。
さらに蘆雪のもっとも知られている傑作です。

お寺に飾られているこれはデジタルプリント複製ですが、

本物は境内にある「串本応挙蘆雪館」でみることが出来るそうです。
(期間限定だと思いますが)
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串本応挙蘆雪館

ふたたび「虎図」(正面から)

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これみんな好きなのではないですか?
私も大好きです。


抱きつきたいような衝動まで起こさせます。笑

私はかってにキャットタイガーと名づけました。

大胆に描いていますが、構図が富士山型で安定感も抜群ですが、
その安定感は虎の身体の動きを封じてしまうものではないところが、妙です。
並ではありません。笑


そして一番いいのはにじみ出ているユーモアの感覚だと思います。


長沢蘆雪の最もいい作品群にはユーモアのセンスが含まれていると思います。

見てみましょう。
「白象黒牛図屏風」です。
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「白象図」
おお〜〜〜〜〜きな白象。

腰辺りにカラスがいます。

長沢蘆雪 キャットタイガー_d0218056_11541867.jpg

「黒牛図」
こちらもおお〜きな黒牛。

お腹辺りに白い犬がいます。

こんな描き方で象と牛を表現した画家は蘆雪が初めてですよ。

また2双での「白と黒色」の対比、
絵の中での「白象と黒いカラス」「黒牛と白い犬」の対比といった、
トポロジカル(図像的)な構成を使っています。



そして黒い牛のお腹にこのワン子
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大きなものを恐れない小犬の存在は、
見る人に安心感を与える役割を持っています。

またこれがかわいいではありませんか?


ユーモアのセンス感じませんか?


長沢蘆雪のワン子は可愛さで有名です。

ワン子を愛していたんでしょうね。

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真ん中の線だけで描かれた白い犬、
肩から尻尾の先までの曲線にky〜〜〜unときます。


ユーモアだけがコンセプトになったような絵がこれです。
明らかに笑わそうとしていますよね。

「なめくじ図」

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これはコンセプチュアルアートといっても違和感はありません。



蘆雪もジャンルを問わずいろいろな題材を描いていますが、
蘆雪らしさがでるのは動物画のようです。

猿。

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「岩上猿・唐子遊図屏風」右隻

猿を描いているものにはあまりユーモアがないのは、
それほど猿に愛着を持たなかったからでしょう。

ですが、この絵の構図も大胆です。
岩場の表現なにですが、とても平面性を意識していると思います。

画面を大きく2分割したことを強調しています!!


獅子
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これ、変ですよね〜、、

落ち武者のようです。

酔っぱらって描いたんじゃ?などと思っていまいます。でも、笑えます。



島根県松江市の西光寺にはこんな絵があります。
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早い筆で描かれてます。

が、ちょっと崩れ気味、、、

ですが、

この描き過ぎない表現、
水墨画の精神に、蘆雪の絵の「軽み」の魅力なのかもしれません。


長沢蘆雪は円山応挙の弟子なのですが、
円山応挙にはユーモアのセンスはありません。
その対比がおもしろいところです。

しかも応挙の得意とした写実的なもの以外に蘆雪
自身のオリジナルを見いだしたんではないでしょうか。

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「富士越鶴図」

見どころは富士山の急な稜線と鶴の飛んでいる列でしょうね。



最後はしっとりとしたこちら。

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「月夜山水図」






南紀串本、行ってみたいですね〜、いや、行きたい!

いや行きます!!





以上です。053.gif053.gif
by hamaremix | 2017-01-05 12:54 | 日本絵画の星 | Comments(2)
Commented by yuurakuotozaemon at 2017-01-05 20:48
見ている人が、可愛い!ってのを書いてるだけよ

猫に犬に、可愛いやんか
Commented by hamaremix at 2017-01-05 21:24
いえいえ、この時代に可愛いのセンスは黎明期だったと思うので、この感覚そのものが挑戦でもあったと思いますよ。

by hamaremix